地域を支える生産者

2023年10月 シイタケ生産者

 

椎茸生産者
前川 正男さん(77歳)

プロフィール

木に菌を培養する「原木栽培」で椎茸を生産。5000本を管理している。

試行錯誤してたどりついた椎茸

 当時は長男が農業を継ぐのが当たり前の時代だったので、自分もそれに倣って高校を卒業してから就農しました。しばらくはみかんやトマトの栽培などをしていましたが体調を崩してしまい、作物を変えることになりました。親戚が椎茸を育てていたので、それならやってみようかと始めたのが25歳の頃です。始めの5年くらいは乾燥椎茸を作っていましたが、乾燥機1回で3ケースまでしか加工できなかったので、100ケース作るためには30回かけることになります。それだけ時間はかかっても乾燥させると水分がなくなり、質量が減ってしまうことから、今は生椎茸に切り替えて出荷しています。

自然と共存する難しさ

 私が栽培しているのは原木椎茸なので、椎茸菌を木に打ち付けてから椎茸が発生してくるまでに時間がかかります。一本一本菌を打ち、それを井形に組んでほだ場に伏せます。自然環境で育てる林の中にあるほだ場と、寒冷紗をかけて作る人工のほだ場があり、人工の方は水やりをします。そうして積算温度が6000時間に達すると椎茸が発生し始めます。発生し始めるためには大人しく放置しておくだけではなく、動かすことが大切です。手間と時間のかかる原木椎茸ですが、最近は鹿にほだ場を荒らされて困っています。綺麗に組んだ木をぐちゃぐちゃにされるのはとても悲しいですね。今は昔に比べ天候も変わり、苦労が絶えません。

里山保全と椎茸栽培

 

 山林で原木椎茸を栽培するということは、里山を守ることにもつながります。山は人の手が入らなければ草木がうっそうと生い茂り、災害に繋がってしまう恐れがあるので手入れが大切です。椎茸栽培を通して里山を守っていけることはとても良いことだと思っています。しかし私も年々歳を取っていきます。周りでもやめていく人が多く、今後が心配ですね。今は健康のためと、地域の里山を守るために椎茸を栽培しているところが大きいです。最近では椎茸が食卓に並ぶ家庭が少なくなっているようで寂しくあります。木の香りのする原木椎茸を是非味わってほしいです。

ページTOPへ