園芸研究家●成松次郎
ニンジンの発芽適温は15~25度で、7~10日で発芽がそろいますが、35度以上では発芽しません。発芽直後の種は乾燥すると枯死し、過湿では酸素不足で発芽不良になります。その後の生育適温は20度前後の冷涼な気候です。
[品種]
耐病性、耐暑性に優れる品種を選びましょう。五寸系では「向陽二号」(タキイ種苗)、「ベーターリッチ」(サカタのタネ)、「ひとみ五寸」(カネコ種苗)などがあります。ミニニンジンは極早生で柔らかく、生食向きです。
[畑の準備]
種まきの2週間前に1平方m当たり苦土石灰100gを散布して、深さ30cm程度に耕しておきます。種まきの1週間前に、1平方m当たり化成肥料(NPK各成分10%)100gと完熟堆肥2kgを施し、土とよく混ぜておきます。70~80cm程度の畝幅に、条間20cm、深さ1、2cm程度のまき溝を2条作ります(図1)。
[種まき]
畑が乾いているときは、まき溝に灌水(かんすい)をしておきます。溝に種を1、2cm間隔に条まきし、裸種子は5mmの厚さ、ペレット種子の場合は1cmの厚さを基準に覆土します。軽い火山灰土では手でしっかり土を押さえ付けておきましょう。さらに、もみ殻をかぶせて乾燥を防ぐ、黒寒冷しゃの被覆で地温を下げるなどの対策を行います。
[灌水]
種まき前に土にしっかり水を含ませること、発芽後も土を乾かさないことが大切です。なお、黒寒冷しゃなどの日射を遮る資材でべたがけしたときは、発芽後すぐに取り除きます。
[間引きと追肥、土寄せ]
1回目の間引きは本葉2、3枚のときに密生部や生育の遅れている株、逆に極端に進んでいる株を間引きます(図2‒1)。2回目は本葉5、6枚のときに行い、株間を6~10cmにします。間引く株の根元を手で押さえて引き抜きます(図2‒2)。最後の間引き後に1平方m当たり化成肥料50gを追肥し、株元に土寄せして株をしっかり固定させましょう。収穫期近くには、根の肩の部分にさらに土寄せし、根が緑に着色するのを防ぎます(図3)。
[病害虫の防除]
葉はキアゲハの大好物なので、見つけ次第、手で取り除きます。ネコブセンチュウに弱いので連作を避け、前作に被害があるときは作付けを控えましょう。
[収穫]
根径5cm程度に肥大した株から順次抜き取ります。年内は肥大が続くので、太り過ぎて裂根しないうちに収穫をします(図4)。8月まきでは、さらに土寄せして越冬させ、葉が枯れた後でも適宜掘り上げて収穫できます。
JA広報通信2023年5月号